看取りまでの期間は3種類

Series: 地域包括ケアの課題と未来 (19)

小野沢滋
北里大学病院トータルサポートセンター長


人は最期の数年をどのように過ごすのでしょうか。よく、「ぽっくり逝きたい」などと聞きますが、果たしてぽっくり逝ける人はどの程度いるのでしょうか。もし、あなたの親が何らかの病気になって、回復困難となった場合に闘病期間はどれぐらいかかるのでしょう。看取りまでの期間の予想がつけば、あなたも「ぽっくり神話」に無用な期待を抱かず、看取りまでの期間の経済的負担、あなたの人生に及ぼす影響を、覚悟をもって具体的に考えることができるようになるのではないでしょうか。仕事を辞めて、1人で10年以上の介護に携わると、よほどの資産家でない限り、自身の老後が苦しいものになります。

いくつかのデータから考えてみたいと思います。

図1は亀田総合病院在宅医療部における1993年から2014年までの21年間における代表的疾患の取り扱い患者の生存曲線です。在宅医療部の対象者のほとんどが、自分で動くことが難しい患者です。

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このグラフで分かるように、動けない期間は大きく3パターンに分かれます。

1つは悪性腫瘍で、外来受診が困難になり在宅医療に移行してから約50日程度で半数が亡くなります。2つ目は呼吸器疾患や心臓疾患で約450日、最後は脳血管障害や認知症で動けなくなった方で、約1300日で半数が亡くなります。

このように動けなくなってから死に至るまでの期間が、病気によって、大きく異なることが分かります。

死亡するまでの体の機能低下の様子も大きく3パターンに分かれます(図2)。

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1つ目は悪性腫瘍です。亡くなる直前に急激に身体機能が落ちます。それまでは普段と変わらない状態が保たれるので、普通に動いたり、コミュニケーションをとることができます。

2つ目は、心臓や肺などの内臓疾患です。亡くなるまでに、例えば心筋梗塞や慢性閉塞性肺疾患の急性増悪など、症状の悪化を何度か繰り返し、そのたびに機能が低下していきます。期間は長いです。

3つ目は、老衰や認知症です。時間と共に徐々に機能が低下しながら看取りに向かいます。寝たきりの期間が長く、最終的にはコミュニケーションがとれなくなります。

では、どれぐらいの人が長期介護を経由して亡くなるのでしょう。に2013年の死因順位10位までの死亡数とその頻度を示しました。肺炎、脳血管疾患、老衰の合計31万850人(24.5%)の多くは、長期介護を経由して亡くなられていると想像されます。

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実は、ぽっくり死ねるのは、脳血管疾患と心疾患のごく一部だけです。滅多にあることではありません。

日本人の死因として最も多いがんは、闘病期間は短く、最期まで意思疎通ができます。現在の緩和医療では、がん性疼痛も十分にコントロールできます。本人にとっても、家族にとっても、うまく医師を選べば幸せな看取りが可能です。

しかし、実際にはがんと同じぐらいの数の人が、長期療養を経て亡くなっている可能性があります。これが日本の実態です。家族にとって、看取りまでの期間が長く、身体機能の低下が進むほど介護や施設費用の負担が重荷になります。具体的にどれほどの負担になるかは、次稿で説明します。


小野沢滋: 看取りまでの期間は3種類. Socinnov, 2, e5, 2016.
© 医療法人鉄蕉会, 社会福祉法人太陽会, Socinnov.

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