認知症グループホームが抱える課題

Series: 地域包括ケアの課題と未来 (25)

柴田範子
特定非営利活動法人楽理事長
(聞き手・熊田梨恵)


熊田 厚生労働省が2015年1月に発表した「認知症施策推進総合戦略(新オレンジプラン)」では、認知症患者数が2012年の約462万人から、2025年には約700万人に増加するという推計が示されました。急増する認知症患者とその家族をどう支えていくかが地域の必須課題です。厚生労働省は在宅介護を推進していますが、長期の家族介護には限界があります。認知症の方を受け入れている施設として、グループホームと精神科病院を挙げることができます。専門の施設ではありませんが、特別養護老人ホームや介護老人保健施設も認知症の方を受け入れています。今回は、グループホームについてうかがいたいと思います。柴田先生、グループホームとはどんな施設で、どんなメリット、デメリットがあるのでしょうか。

柴田 グループホームは、比較的元気な認知症の方が少人数で共同生活を営む施設です。利用者は5人から9人。特養などに比べると小規模ですが、雰囲気はアットホームで、スタッフは食事の支度や掃除、洗濯などを利用者と一緒に行います。家庭的で落ち着いた雰囲気の中で生活することでなじみの関係ができ、生活上の困難や行動障害が軽減されたり、共同生活の中で役割を見つけられるというメリットがあります。デメリットは軽度の方の入居を前提とした施設であることです。入所条件に「共同生活の営める方」と書かれている場合が少なくありません。介護職員不足から重度化に対応した人員配置が難しく、日中のスタッフは複数いますが、夜間は1人が多いようです。看護師は施設によっていないところもあります。

熊田 そのグループホームが、どんな問題を抱えているのでしょうか。

柴田 先ほども話しましたが、入居者の重度化です。開設後10年を超えるグループホームも少なくありません。時間の経過とともに医療的ケアの必要な利用者は多くなりますから、より手厚いケアや介護が必要になります。特に夜勤時は看護師もいないので緊急時の対応が不安だと言う介護職は多いようです。

熊田 でも最初のお話では、グループホームは軽度の方が前提ということでしたよね。重度化したら在宅に戻らなければいけないのでしょうか。在宅介護の負担を軽減するために入所していたのに、親子2人の世帯だと子どもは職を失ってしまいますよね。

柴田 ご家族の負担が大き過ぎるので、在宅に戻そうとすると軋轢が生まれかねません。グループホームに入所するまでに、ご家族は疲れ果ててしまっている場合が少なくありません。様々な出来事が起きて戸惑いも大きかったはずです。経済的な負担も少なくありません。介護のために職を失うことは社会全体の損失になります。こうしたこともあって、重度の方でも引き続き受け入れている施設は多いです。別の施設に移るとしても、入居待ちの期間をどうするか、介護費用の問題もあるでしょう。特養は認知症を専門としていませんが、費用が安いので、最後の希望になる場合が多々あります。特養が空くのを待ちながら、グループホームに入居している方もいます。

熊田 家族の生活や経済事情は切実ですよね。グループホームで最期まで引き受ける場合、少ない人員配置で看取りは可能なのでしょうか。

柴田 看取り介護加算や医療連携体制加算が介護報酬の中に組み込まれていますし、グループホームに求められる役割の1つとして看取りをする施設は増えてきました。今後さらにニーズは増えるでしょう。24時間一緒に過ごしてきたスタッフに支援されながら生活し、看取られるのは自然なことです。普段から職員や家族、連携している医療職が本人の日常の変化などを話し合って、いざという時の体制を作っておけば、看取りの時には、家族、介護職員、看護師が本人に寄り添っていれば十分です。ただそうなると、終末期ケアなどのスタッフ教育や家族の意思確認など、負担は増えます。介護職員としての経験が浅かったり、終末期ケアの教育をしっかり受けていないと、看取りについての不安から、何かあると医師や救急医療に頼りたくなる気持ちが出てきます。自分たちでしっかり看取っていけるようにするために、介護職員への教育とサポートが組織に求められます。

熊田 グループホームは社会から必要とされているにもかかわらず、多くの問題を抱えていることが分かりました。


柴田範子: 認知症グループホームが抱える課題. Socinnov, 2, e11, 2016.
© 医療法人鉄蕉会, 社会福祉法人太陽会, Socinnov.

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